耕木杜…木を耕し杜(もり)に帰る  




息子がまだ年少の頃、小学校入学に合わせて、
自分に万が一のことがあっても親父が生涯をかけて磨いてきた技術や人格が伝わる物を残しておきたいと、
仕事が終わってから約1年位かけて、息子用の机を作りました。
自分は一度も大工の道は勧めませんでしたが、不思議と彼は自ら大工の道を選びました。

感性は住まう環境の中で培われていくものだと思います。
日々の暮らしは、自分の選んだモノとの関わり合いの連続です。
ということは、自分が日々使う道具、家具、身の回りの様々なモノは、
いわばその時の自分の分身ではないでしょうか。
自分の身の丈を心得つつ、だれがどんな素材でどのように作ったのかが見える、
風通しのいいモノを丁寧に選んで、大切に付き合ってゆくこと。
そういったものに日々触れていることは、
実は自分の人生に直結するとても大切なことだと思います。

先日、事務所と工房の間にデッキを作りました。
いつもは自分たちの為になかなか時間をとって製作をする機会はありませんが、
自然に休憩はデッキでするようになり、みんなの心の風通しも良くなった様です。
ちょうど昨年秋に樹木を植えた場所の隣です。
新緑の今、瑞々しい植栽を吹き抜ける風が心地よく、デッキができた事で集う空間が生まれました。
穏やかな日常が繰り返されていく事でしょう。

空間は内だけではなく外においてもそういう力も持っています。

耕木杜代表 阿保昭則